自閉症スペクトラムの人はなぜ「友人を覚えづらい」のか?
- 古井 伊智郎
- 3月12日
- 読了時間: 2分

はじめに
私たちは日々の生活の中で、友人や知人の顔や名前、関係性を自然に記憶しています。しかし、自閉症スペクトラム(自閉症)の方々の中には、「友人を覚えるのが難しい」と感じる人が多いことが知られています。東京大学の研究チームがこの現象の神経メカニズムを解明し、2024年6月に学術誌『Nature Communications』に研究成果を発表しました。本記事では、その研究内容をわかりやすく解説します。
研究の概要
社会性記憶と海馬の関係
自閉症スペクトラムの方々が友人を覚えづらい背景には、社会性記憶(他者に関する記憶)の異常が関与していると考えられています。研究チームは、脳の海馬腹側CA1領域が社会性記憶を担っていることに着目し、この領域の異常が自閉症の症状にどのように関与するのかを調査しました。
遺伝子操作による実験
研究では、Shank3という自閉症関連遺伝子に注目。Shank3遺伝子を欠損させたマウスを用いた実験で、海馬腹側CA1領域の機能が低下すると、他者を記憶する能力が低下することが確認されました。さらに、CRISPR/Cas9というゲノム編集技術を用いて、この領域だけを選択的に遺伝子操作した結果、マウスの社会性記憶が損なわれることが分かりました。
研究の意義と今後の展望
自閉症スペクトラムの新たな治療法への期待
この研究により、自閉症の社会性記憶の低下が、海馬腹側CA1領域の機能異常によって引き起こされる可能性が示唆されました。現在、自閉症に対する治療薬はほとんど存在しませんが、この発見が新たな治療法の開発につながることが期待されています。
自閉症スペクトラムへの理解を深める
「友人を覚えるのが苦手」という特性が、単なる記憶力の問題ではなく、脳の特定の領域の機能によるものだと分かれば、自閉症の方々への理解が進むでしょう。社会全体で、彼らが生活しやすい環境を整えることが重要です。
おわりに
今回の研究成果は、自閉症の神経メカニズムの理解を深める大きな一歩となりました。今後の研究の進展により、より具体的な支援策や治療法が開発されることが期待されます。私たちも、自閉症の特性を理解し、共に生きる社会を作っていくことが大切ですね。
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